手術が決まった日のことを、今でもよく覚えています。
怖かった。
でも不思議なくらい、頭は静かに動いていました。
手術の説明
行われる手術は「経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt術)」。
お腹を切らずに、尿道から器具を入れて腫瘍を取り除く手術です。
取り出した腫瘍は組織検査に出され、そこでがんの状態やステージがわかるとのことでした。
CTは、転移があるかどうかを確認するためのものだと教えてもらいました。
参考:国立がん研究センター がん情報サービス「膀胱がんの治療」
そして先生から、こう言われました。
「ステージⅡ以上であれば、膀胱を全部取り除く手術になります」
膀胱全摘出。
その言葉を聞いた瞬間、それだけは絶対に嫌だと思いました。
家に帰って、頭の中を整理した
説明を終えて、ひとりで家に帰りました。
静かな部屋で、いろんなことが頭をぐるぐると駆け巡りました。
怖い気持ちはありました。
でもそれと同時に、妙に冷静な自分もいました。
その時に考えたことを、正直に書いておこうと思います。
「独身でよかった」
意外かもしれませんが、まず頭に浮かんだのは、そのことでした。
でもそれは、ひとりでよかったという意味ではありません。
もし守るべき家族がいたら、どれほど心配をかけただろう。
もし両親が生きていたら、どれほど悲しませただろう。
そんなことを考えました。
私には大切な家族である犬のノアンがいます。
もし自分に何かあったら、ノアンは姉のところで育ててもらおう。
そう思える場所があることが、あの時の私にとっては救いでした。
そして、もしステージが悪ければ、仕事をすぐ辞めて海外旅行に行こう。
そんなことまで考えていました。
その中で、もう一つ頭に浮かんだのが、
「これ、住宅ローンの団信おりるのかな」
ということでした。
団信という小さな希望の光
不謹慎に聞こえるかもしれません。
でもこれが、あの夜の私の正直な気持ちでした。
団信とは、住宅ローンを組む際に加入する保険です。
契約内容によって条件は異なりますが、死亡や所定の病気・状態に該当した場合に、住宅ローンの残高が保障されることがあります。
「もし最悪の結果になっても、家だけは残せるかもしれない」
そう思った瞬間、少しだけ心が軽くなりました。
がんと告げられた夜に、命のことと同じくらい、ローンのことが頭に浮かんだ自分を、おかしいとは思いません。
それくらい、人は追い詰められた時、具体的な「逃げ道」や「支え」を探すものだと思うからです。
団信という小さな希望の光が、あの夜の私の精神をなんとか保たせてくれました。
がんをきっかけに、お金と人生を考えた
この夜のことは、今でも鮮明に覚えています。
怖かったけれど、冷静でした。
悲しかったけれど、どこかで前を向こうとしていました。
がんをきっかけに、お金のこと、命のこと、これからの生き方について、初めて真剣に考えた夜でもありました。
私の経験は、あくまで私個人の体験です。
団信の条件や保障内容は、加入している金融機関や契約内容によって異なります。
気になる方は、必ずご自身の契約内容を確認し、必要に応じて金融機関に相談してください。
次回は、入院前日に私がとった、ちょっと意外な行動について書こうと思います。


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